令和4年大学入学共通テスト(第2回・本試験)日本史B(2022.1.15実施)分析・史料問題【生徒】

日本史B(本試験)平均点52.81点。過去最低点

 2022年度から年次進行で導入される高校の新学習指導要領は「思考力」「判断力」「表現力」とアクティブラーニング(主体的・対話的・深い学び)を重視している。現在は移行期間にあり、共通テストの出題内容に模索と混乱が起こっている。

 共通テストの試行段階では、平均点は50点が目標となっていたのではなかろうか。その50点の目標と思考力を問うという2つの条件を満たした問題を作成して、平均点52.81点であれば、大学・高校の問題作成者は的確な出題をしたと評価できる。

 

 しかし、今回の共通テスト問題作成の問題点を2点指摘しておく。1点目は、思考力を問うのであれば、考える時間が必要という点である。平均点が低かったのは、資料を使うことや思考する問題が出題されたためだけではないと考える。受験生が資料を読解することや組合せ・正誤問題を思考するために時間不足になって平均点が下がっていると推察できる。問題数を減らして思考する時間を受験生に保証することが必要である。

 2点目は、世界史Bの平均点が65.83点になっていて、日本史Bの平均点と13点の著しい差が出たことである。最近のセンター試験では地歴科3科目の平均点の差は、ほぼ5点以内に収まっていた。世界史Bの問題作成者は、結果としてセンター同様に60点をターゲットに問題作成したことになった。もし、地歴科に平均点50点を目標にするという共通理解があったとしたら、世界史Bは質の悪い問題であったことになり、地理B(平均点61.15点)の問題作成にも問題があったことになる。

 

 私も現役の教員の時に経験しているが、教務規定を守らず、高い平均点を出す教員がいて、生徒は科目選択により不利益を被っていた。今回の本試験の日本史B平均点が目標平均点に近い良問としても、日本史Bを選択したために共通テストの合計点が低くなり、大学入試に不合格になったのでは、受験生にとって日本史Bの問題は「悪問」となる。逆に、世界史B、地理Bの悪問は受験生には「良問」となる。大学入試センターは、平均点は何点をめざしているのか受験生に明確にすべきである。

2022.2.9

 

共通テスト日本史Bの問題点と改善すべき点

 「思考力」「判断力」「表現力」が問われた日本史Bが良問であっても、世界史B、地理Bとの平均点の差が出れば、得点で合否が決まる大学入試制度においては、受験生は不合格になり、受験生にとっては良問が悪問となる。特に国公立大学後期日程や私立大学など、共通テストの得点のみの入試への影響は決定的である。また、2次試験(個別学力試験)を行う大学でも合否に大きな影響が出る。良問が良問として評価されるためには、各科目間の目標得点率を明確に受験生に示して厳格な作問をすべきである。科目間の平均点に2~3点以上の差が出た場合は合否に影響するので、平均点を同一にする得点調整を行う入試制度の改革が不可欠である。また、20点での得点調整の20点の根拠を示すべきだ。

 また、大学入試センターは教科・科目作成の目標としている平均得点率(平均点)を公表すべきだ。令和4年度の地歴科をみると、世界史Bは60点をターゲットにしているように見えるし、日本史Bは50点をターゲットにしているようにも見える。どちらが目標の平均点に対し良問を作成したのか評価できない。評価できなければ、作問にどのような問題点があるのか指摘できない。受験生・教員に目標平均得点率(問題作成で目標とした平均点)を公表し、責任を明確にして、問題作成の課題を改善すべきだ。

 資料を使用し解読する出題が多くなり、解答方法が複雑になっている。歴史的思考力を問う問題作成方針としては評価できる。最近の問題数は32問であり、適切な問題数に見える。しかし、完成法の出題を例に取れば、空欄に適語を1語いれる形式の出題はなくなっている。32問はすべて、組合せ問題であり、正誤を問う問題であり、年代序列であり、解答に時間のかかる出題になっている。このため、32問と言いながら、受験生の肌感覚ではその倍程度の出題数であり、受験時間は90分必要と感じていると推察する。じっくり思考するタイプの受験生は不利になり、時間不足が生じていると推察する。思考力を問いながら、じっくり思考をするタイプの受験生に不利で、頭の回転の速く処理能力のある受験生に有利な出題に陥っている。資料解読や組合せ・正誤の出題で思考力を問うならば、問題数を25問前後にすべきだ。

2022.1.25

 

日本史B本試験 第1問・通史のテーマ

【令和4年度(2022.1.15) 第2回共通テスト 日本史B本試験 第1問・通史のテーマ】

◇「姓・苗字(名字)・名前」

 

《直近の第1日程・本試験第1問・通史のテーマ》

◇令和3年度第1回共通テスト第1日程(2021.1.16)「貨幣の歴史」

◇令和2年度センター試験(2020.1.18)「教育」

◇平成31年度センター試験(2019.1.19)「交流・外交」をテーマに、第1問で、近世までの地域、東アジア、蝦夷地との交流・外交に関する出題、第6問で日米外交史に関する出題という変則的な構成となっている。

◇平成30年度センター試験(2018.1.14)「観光」

 

《共通テスト試行調査第1問・通史のテーマ》

◇第2回試行調査(2018.11) 「土地開発と災害の歴史」 

◇第1回試行調査(2017.11) 18歳選挙権制の実現をふまえ「中世までの「会議」や「意思決定」の方法」

2022.1.20 

 



各問題の配点、時代・分野別、資料、出題方法・形式、問われる資質・能力、難易度。

 《全6問 テーマ。解答番号。配点。資料。時代・分野別。出題形式。必要な能力。難易度》 

 

第1問 通史・テーマ「姓・苗字(名字)」6問 18点 

姓名・個人の名前が時代によって変化することを考えた2人の会話。

 1 3点 「メモ」。中世・社会1.5点。近代・政治1.5点。完成法・組合せ。読解・思考。やや易。  

 2 3点 中世・政治。連動型組合せ。知識・類推。やや難。 

 3 3点 近世・文化1点・政治1点・外交1点。年代序列。知識。標準。 

 4 3点 「天皇略系図」。古代・社会。正誤・組合せ。読解・思考・判断。やや難。 

 5 3点 「生まれ年別男性名」。近代・社会1.5点。現代社会1.5点。正誤・組合せ。知識・読解。やや易。

1927年は昭和二年。1928年は昭和三年。アジア太平洋戦争の1942年から1945年まで「勝」という名が最多である。 

 6 3点 古代・社会0.75点。中世・社会0.75点。近世・社会0.75点。近代社会0.75点。正誤・組合せ。読解・思考・類推。標準。 

 

第2問 原始・古代「日本古代の法整備と遣隋使・遣唐使」 5問 16点

高校生の調べ学習と年表作成。 

7 3点 「年表」。原始・古代・外交1.5点・政治0.75点・文化0.75点。正誤(正選択)。知識。やや難。 

8 3点 「年表」。古代・文化。時系列・組合せ。知識・類推。標準。 

9 4点 「史料・計帳」。古代・政治。正誤・組合せ。読解・知識・思考。やや難。 

10 3点 「史料・憲法十七条など」。古代・政治。年代序列。読解・思考・類推。難。 

11 3点 古代・政治。正誤(誤選択)。知識・思考。やや難。 

 

第3問 中世「中世の海と人々との関わりの歴史」 5問 16点

高校生が先生を訪ねた時の会話。

 12 4点 中世・経済3点・社会1点。正誤(誤選択)。知識・思考。標準。 

 13 3点 中世・政治2点・経済1点。年代序列。知識・連関。標準。 

 14 3点 「石山寺縁起絵巻・馬借」。中世・社会。正誤・組合せ。知識・連関。易。 

 15 3点 「史料・朝鮮王朝目録」。中世・外交。正誤(正2つ選択)・組合せ。読解。連関。標準。 

 16 3  「地図」。中世・経済1.5点・外交1.5点。連動型・組合せ。知識・思考・類推。やや難。

地図a‐箱館 b-小浜 c-鷹島 d-種子島(西村)。文に「越前」とあるので「b-小浜」と誤答しないこと。 

  

第4問 近世「近世の身分と社会」 5問 16点

高校生が調べたメモ。

17 3点 「メモ」。近世・社会。正誤(誤選択)。知識・連関・思考。やや難。 

18 3点 「メモ」。近世・文化。年代序列。知識・思考。やや難。 

19 3点 「史料2点」。近世・社会。正誤・組合せ。読解・思考・連関。標準。 

20 4点 「史料」。近世・政治3点・社会1点。正誤(正2つ選択)・組合せ。読解・知識・時系列。やや難。 

21 3点 近世・社会。正誤(正選択)。知識・思考・判断。標準。 

 

第5問 近代(幕末・明治(19世紀))「外交史」 4問 12点

日本とハワイの関係史を調べた高校生二人の会話。

22 3点 幕末・近代・政治1.5点・文化1.5点。連動型・組合せ。知識・思考。標準。    

23 3点 「史料・大日本外交文書」。近代・外交。正誤(正2つ選択)・組合せ。読解・知識・連関。難。 

24 3点 近代・外交。年代序列。知識・思考・連関。やや難。 

25 3点 「史料2点」。近代・外交。正誤・組合せ。読解。易。

 

第6問 近・現代「日本における鉄道の歴史とその役割」 7問 22点

A近代 B現代。

26 3点 近代・経済。完成法・組合せ。知識。易。 

27 4点 「史料・時刻表・詔」。近代・社会。正誤(正2つ選択)・組合せ。読解・思考・連関。標準。

28 3点 「統計表」。近代・経済。正誤(誤選択)。読解・知識・思考。やや難。 

29 3点 近代・外交。年代序列。知識・連関。標準。 

30 3点 「写真2枚」。現代・社会。連動型・組合せ。時系列・知識・思考。標準。 

31 3点 「統計表・年表」。現代・経済。正誤(正選択)。読解・知識。易。 

32 3点  現代・政治。正誤・組合せ。知識・類推。標準。

 

時代別・分野別の割合。出題形式

 《時代別の出題割合》( )は昨年度共通テスト(第1日程・2021.1.16実施)

 原始・古代 19.75点。(27.5点

中世 21.25点。(14.25点

 近世 19.75点。19.75

 近現代史【ペリー来航以後の幕末を含む】 39.25点。(38.5)。うち現代史【戦後】の問題 10.5点。1987年まで。 (3.75点。1965年まで)

〇今年度は古代の出題が減少し、中世が増加した。

〇現代の出題が激増している。第5問・第6問は日本史Aと共通問題。

 

《分野別の出題割合》

 政治【経済・金融政策を含む】 25.75点。39

 外交 22点。(8.5

 経済・社会 43点。(38

(うち経済15.25点。社会27.75点)

 文化 9.25点。(14.5点)

〇資料の出題の増加とともに、経済・社会からの出題が多い。

〇文化は知識が多く、「思考力」等が問いにくいためか減少が顕著である。

  

《出題形式の割合》

完成法・組合せ 2問。

連動型・組合せ 4問。

時系列・組合せ 1問。

正誤・組み合わせ 8問。

正誤(正2つ選択)・組合せ 4問。

正誤 7問(内、誤りの文を選択する問題・3問、誤りの文を選択する問題・4問

 年代序列 6問。

 

 〇単純な完成法(文の空欄に適語を入れる形式)は完全に姿を消した。完成法でも組合せ式になっている。細かな歴史的語句の暗記は必要ないが、主要な歴史的事象(語句)の理解が必要となる。

〇組合せの出題が多いので、問題数(32問)以上に問題は多い。資料の解読や思考力が必要な上にこの出題量では時間不足が生じる。時間配分が重要で、あらかじめ過去問を50分で解いて、事前の対策を必ずしておくこと。

〇文の正誤と正誤組合せの問題が19問あり主流となっている。「誤」の選択は解きやすいが「正」の選択は解答が困難である。

〇文を年代順に並べる形式が増えている。授業で、歴史的事象の理解だけでなく、歴史の流れをしっかりとつかむことが求められている。

〇以上の出題形式は、資料の読解技術や歴史的思考力など新学習指導要領が求める授業方法や能力の育成が意識されていると考える。

   

 《資料。史料(以下で解説)・図等の読解》

  史料読解が8問(史料数13)、地図が1問、絵巻が1問、写真が1問(2枚)、系図が1問、年表が3問、統計表が3問、メモが3問ある。センター試験と比較すると激増している。ただし、史料には(注)が付いており、史料を正確に読めば解答ができる出題になっている。

 第1問から第5問まで高校生の調べ学習を題材にしている。男子生徒と女子生徒が登場する場合は、女子生徒が最初に書かれており、ジェンダーが意識されている点は評価する。 

 

1~6の選択肢別正答率

正解の番号(全32問)(前年度)

1 8問 25.0%(9問 28.1%)

2 7問 21.9%(6問 18.8%)

3 5問 15.6%(6問 18.8%)

4 10問 31.1%(7問 21.9%)

5 1問  3.1%(3問  9.4%)

6 1問  3.1%(1問  3.1%)

 令和4年度は選択肢4の正答が多かった。すべて4にマークすれば33点を取ることができた。

 令和4年度と3年度の本試験に限定すれば、回答がわからないときは選択肢の4ないし1にマークすると正答の可能性が高くなる。選択肢の3と2は正答の可能性がやや低い。 

 


大学入学共通テスト本試験:日本史B(2022年1月15日実施) 史料問題(全8問(史料数13))解説

史料問題回答のポイント(令和3・4年度(第1・2回共通テスト)日本史Bの出題から)

・「思考力」「判断力」「判断力」、アクティブラーニングが歴史学習でも求められている。共通テスト日本史Bでも、センター試験と比較して資料を使用した出題が多く、受験生が慣れていない史料問題が増加している。

・史料を読解し、史料の内容と設問の文を比較・連関させて正誤を考える形式で出題される。

・教科書等に記載されている史料と初見史料がある。初見史料は読解の技術が問われるが、【註】があるので、落ち着いて読解すればよい。

・先入観にとらわれないで、史料に基づいて読解し、設問の正誤を考える。

・史料の正確な読解と学習してきた歴史上のできごとを連関・類推させる能力が問われる。

・2021年度第一日程の史料問題は以下の通り全5問だった。2022年度は8問に増加しており、史料をもとに考察させる意図がみられる。歴史的思考力を問う方向であることは評価できる。ただ、その評価の反面、受験生は解答に時間がかかるため、平均点を低下させることに繋がったと考える。

2022.1.20 2022.4.3追記

 

大学入学共通テスト(第2回)日本史B本試験(2022.1.15実施)

 

《史料問題解説》

 

2問 問3 解答番号9 

〇史料『正倉院文書』「計帳」

〇【基本的な知識】律令政府の戸籍は、良賤や氏姓などの身分を確定し、班田の台帳となり、計帳作成の基礎となるなど、公民支配の基本台帳としての性格を有していた。戸籍が6年ごとに作成されるのに対して、計帳は調・庸などを賦課する台帳として毎年作成され、年ごとの人員の変動が把握された。賦役からの逃亡を防ぐため、性別・年齢のみならず身体的特徴や現在の居住地まで記載するのが計帳の特徴である。(山川出版『詳説日本史史料集』要約)。受験生には計帳の初見史料ではあるが、授業等で計帳の史料を読んで基礎的な理解ができているかどうかが問われている。

〇【a~d】の正誤

-誤。「課口(かこう)一人 現に輸す 一人 正丁」とあり、調・庸を納めるのは1人である。他の14人は不課口である。

-正。計帳は毎年作成された。

-誤。この計帳は天平五年(733年)に作成されているが、和銅七年(714年)に逃亡した奴婢が登録されている。

d-正。計帳には黒子(ほくろ)などの身体的特徴が記載されている。

【正解】④ b・d

 

2問 問4 解答番号10

〇史料「憲法十七条」「養老令」「延喜式」

〇「大宝令」と「養老令」は大差がなく律令国家の行政法である。律令国家の課題を改善するため、律令を補足・改正した「格」と施行細則の「式」が制定され、「三代格式」がまとめられた。「三代格式」で完存しているのが「延喜式」である。ここでは、調・庸を都に運ぶ脚夫の労苦を軽減する政策の観点から、『令義解』と『延喜式』の歴史的な位置付けを理解しているかが問われている。

〇【Ⅰ~Ⅲ】の出典。

-『令義解(りょうのぎげ)』「賦役令(ぶやくりょう)」。『令義解』は『養老令』の官撰注釈書。833年完成。史料は「調」の納税物の説明。

-『日本書紀』「憲法十七条・十二」。604年。

-『延喜式』「巻22 民部上」。927年完成。調・庸を都に運ぶ脚夫の往還は過酷だった。しかし、令の原則である「凡そ調庸の物は、年毎に、八月の中旬より起(おこ)りて輸(いた)せ。近国は十月三十日より、中国は十一月三十日、遠国は十二月三十日より以前(さき)に、納(い)れ訖(お)へよ。」の納入期限は維持された。しかし、『延喜式』では、令の納入期限が緩和された。

【正解】③ Ⅱ--

 

3問 問4 問題番号15 

〇史料『朝鮮王朝実録』

〇中世に綿布が朝鮮から輸入されたことと代銀として銀が支払われた日朝貿易が、朝鮮の政治・社会に与えた影響に関連する出題。日本国内の経済が朝鮮の政治・社会に影響を与えたことを通して、日本の歴史を東アジアの視点から理解する必要があることを考えさせる問題である。

〇【a~d】の正誤

-誤。「多く商物を齎(もたら)し、銀両八万に至る」「倭使の銀を齎すこと」とあり、銀は日本からもたらされたので誤り。

-正。朝鮮からもたらされた綿布は衣料などの材料となった。

-誤。銀の輸入と綿布の輸出は、「利は彼(日本)に帰し、我れ(朝鮮)其の弊を受く」とこの貿易の弊害を主張し、「後来の齎す所、必ずや此に倍せん」と危機感を持っている。

-正。

【正解】④ b・d

 

4問 問3 解答番号19 

〇史料

史料1『鴨の騒立(かものさわだち)』:『鴨の騒立』は加茂一揆(1836年)の記録。加茂一揆は、三河加茂郡の百姓が世直しを要求した一揆。大阪の大塩平八郎の乱(1837年)と同時期。

史料2『蛛の糸巻(くものいとまき)』:『天明事跡 蛛の糸巻』(第2巻「二十五 うちこわし」)山東京山(さんとう-きょうざん。山東京伝の弟)が江戸の「天明のうちこわし」(1787年)を記述している。

〇史料1と史料2を通して、天明の大飢饉・天明の打ちこわしと松平定信の寛政の改革、天保の大飢饉・百姓一揆と水野忠邦の天保の改革の理解が問われている。史料1が天保期、史料2が天明期と時代を逆に記載してあるので、解答番号20を含め、時間に追われると混乱すると思われる。

〇X・Yの正誤

-正。史料1に、「もし不承知の村は、一千人の者ども押し寄せ、家々残らず打ち崩し申すべし」とある。

-誤。史料2は、「天明の打ちこわし」の中の「江戸の打ちこわし」を記載している。米価高騰で生活苦となった江戸の下層町人が米問屋などを襲撃したもので、「百姓たちが結集して庄屋や米屋を襲撃した世直し一揆」は誤り。

【正解】② X-正 Y-

 

4問 問4 解答番号20

〇史料3「野非人之儀ニ付風聞書」旧幕府引継書(1836年・天保7

〇天保期の社会と社会政策に関する問題。農村の疲弊と貧農の都市への流入、それに対応する寛政の改革と天保の改革の理解が問われている。

〇【a~d】の正誤

-誤。場末の町家に住居していたその日稼ぎの人たちが、食べ続けることができなくなり、店賃も払えなくなって無宿になり、野非人同様の「物貰い」をする者が多数いるとある。したがって、「場末の町家には、物乞いをするその日稼ぎの人々が多数住んでいた」は誤り。

-正。「御当地非人頭ども、日々(中略)狩り込み、手下に致し候」から類推する。

-誤。「この後」の改革は、天保の改革である。「石川島に人足寄場を新設」したのは、寛政の改革なので誤り。

-正。天保の改革の「人返しの法」である。

【正解】④ b・d

 

5問 問2 解答番号23

〇史料1『大日本外交文書』

〇日本とハワイの外交関係(日布外交)を通して、幕末・明治初期の外交関係を考えさせる問題。

〇【a~d】の正誤

-誤。「他国の臣民と交易するを許せる総ての場所、諸港、及び河々に」とあり、「相手国の国内場所の制限なく往来したり、滞在・居住・商売したりすることができる」とは定めていない。

-正。「他国に一般に許容するものは両国の臣民にも同様推及すべし。」と双務的最恵国待遇を定めている。

-誤。「日清修好条規」の調印は18717月のことであり、琉球漂流民殺害事件は187111月のことであるので、この事件に関する賠償金を「日清修好条規」に取り決めることはできない。

-正。

【正解】④ b・d

 

5問 問4 解答番号25

〇史料

史料2 『海外在勤四半世紀の回顧』

史料3 山口県「県政事務功程」

〇ハワイの移民と国内政治や国内社会との連関を考えさせる問題。外交政策と社会状況の史料を比較させることで、ハワイ移民の歴史的意義と真実を多面的に考察させる、史料問題の良問である。

〇X・Yの正誤

-誤。「ハワイに欧米式農業の技術を伝え、移民たちがそその対価を得て帰国することを期待していた」とあるが、史料2では、「欧米式農業法を実習し、秩序的労働法を覚え、且つ相応の貯蓄を携へ帰国せしめ」とあるので誤り。

-正。史料3に「内国に於いては労働者の賃金の薄利なるのみならず、世上一般事業の不振なるに従ひ、労働者就業の困難に迫らるるに依るもの」とあり、正しい。

 【正解】③ X-誤 Y-正 

 

6問 問2 解答番号27

〇史料

「汽車運転時限幷賃金表上達」

「太陽暦頒行ノ詔」

〇【a~d】の正誤

-正。太陽暦の採用の詔書は明治5年(1872年)119日で、122日から太陽暦となった。時刻表は18729月なので文は正しい。

-誤。太陽暦は採用されていない。

-誤。鉱山以外での電気機関車の開業は京都電気鉄道の1895年である。明治初期の動力源は蒸気である。

 d-正。発車時刻の10分前に駅に来るよう求めている。

【正解】④ a・d

 

2022.1.21 画像追加2022.3.19(朝日新聞2020.1.19)

 

昨年度 大学入学共通テスト第1日程:日本史B(2021年1月16日実施) 史料問題(全5問)解説  (問題は下記の「共通テスト 過去問演習の①」)

(1)第2問 問2 解答番号8

〇史料:「江田船山古墳出土鉄刀銘文」教科書掲載の多い金石文。

〇出題内容:古代の政治。5世紀後半のヤマト政権の支配地域の拡大に関する出題。

〇必要な能力:《知識》江田船山が熊本県、稲荷山が埼玉県である。ワカタケルが「倭の五王」の「武」と雄略天皇に比定されている。倭王武は478年に南朝の宋に上表しており、東国、西国、海北の諸国を平定している。《理解》:ヤマト政権が関東地方から九州地方までの地域を統一していた。

〇解答:正誤の組合せ。

X 漢字の音を借りて日本人の名や地名などを書き表すことができるようになっているので正しい。

Y 埼玉県から熊本県までの豪族がヤマト政権の大王に仕えていたことがわかるので正しい。

 

正解:① X 正 Y 正

 

(2)第3問 問1 (1) 解答番号 12

〇史料:紀伊国那賀郡神野真国荘(ながぐん・こうの・まくにのしょう)の成立に関する初見文書。

〇出題内容:中世の社会・政治。12世紀、院政期の荘園の成立過程を問う出題。

神野真国荘は、院庁下文によって成立した鳥羽院の自領の荘園。院の使者と郡司が牓示を打って立券し、郡司は紀伊国留守所(国衙)に報告した(本家・鳥羽院。領家藤原成通)。

〇必要な能力:《史料読解の技術》読解だけで解答可能。

解答:正誤の組合せ。

X 史料から、紀伊国留守所(国衙)は、院庁下文のとおり立券して報告するよう郡司に下達しているので正しい。

Y 史料から、紀伊国留守所は、那賀郡司に対し、院の使者とともに牓示を打ち、文書を作成して立券し、報告するよう命じているので正しい。

 

正解:① X 正 Y 正

 

(3)第4問 問4 解答番号 20

〇史料:「須坂町法取締規定書」の初見文書。

〇出題内容:近世の社会・政治。休日について定めた1814年の町法に関する出題。

〇必要な能力:《史料読解の技術》読解のみで解答可能。

〇解答:誤っている文を1つ選択。

①休日は、村や町があらかじめ定めておいた休日と一時的に広まる臨時の休日があり「遊び日」とよばれた。

②休日は、住民から町役人へ申し出て領主の許可を得ていたので、全国一律に制定されていなかったので誤り。

③必要な休日は、町の住民から町役人を通して領主に休日を願い出た。

④「附けたり」で、休日は無駄な時間を過ごさず、手習いやそろばんなどに励むことが奨励されている。

 

正解:②

 

(4)第4問 問4 解答番号 21

〇史料:『幕末御触書集成』第1巻の初見史料。

〇出題内容:近世の政治。天長節のお祝いに関する史料読解。

〇必要な能力:《史料読解の技術》《思考力》。

〇解答:最も適当な文の2つを組合せて選択。

a 「天下の刑戮差し停められ候」とあるので正しい。

b 「毎年此の辰を以て」とあり、この年1回限りでなく毎年の922日に行われたので誤っている。

c 庶民も「一同御嘉節を祝い奉り候様」と天長節を祝うよう促しているので正しい。「天皇の存在を意識させようとしたものだった」ことは史料には記載がないが推察できる。

d 史料では天長節を祝うことを禁じておらず、そもそも禁ずることと天皇の権威を高めることは矛盾しているので誤り。

正解:① a・c

 

 

(5)第5問 問3 解答番号 24

〇史料:景山(福田)英子『妾の半生涯』。著名な文献の初見部分。

〇出題内容:近代の文化。明治期の女子教育機関の課題解決の取り組みに関する出題。

〇必要な能力:《史料読解の技術》《思考力》《知識》。年代暗記につながる出題は問題が残る。

〇解答:最も適当な文の2つを組合せて選択。

a 当時の一般女学校の工芸科が「優美を旨」として、生計の助けにならないことを課題にしており、「角筈」で「優美な技術を教えたかった」とは考えられず、誤りである。

b 「優美を旨」とする技術教育を課題としており、「角筈」では生計の助けになる技術を教えたかったと推察できるので正しい。

c 「角筈」の設立は1901年、教育勅語の内容の説明は正しいが、発布は1890年なので時系列が誤っている。「角筈」設立と教育勅語は直接的な連関はないので、因果関係等を思考して時系列を判断することはできない。教育勅語などの主要な歴史的事象の年代の知識を求めている。

d 義務教育が6年となったのは1907年なので正しい。年代の知識がないと答えられないので問題作成方針に沿っていない。

 正解:④ b・d

 

2021.3.1 画像追加2022.3.20(朝日新聞2021.1.17)

 


第1日程(2022.1.15) 平均点予想(ベネッセ・駿台。河合塾)。得点調整の必要性。

 《地歴科》

世界史B ベネッセ・駿台。 河合塾66点

日本史B ベネッセ・駿台。 河合塾53点

地理B  ベネッセ・駿台。 河合塾59点

 入試センターの目標得点率が50点なのか60点なのかが明確でない平均点になっている。もし50点なら、日本史の問題作成者(高大連携)は目標に近くなっているが、世界史Bの平均得点率が高いために、日本史の受験生は不利益を被る。すなわち、日本史の良問を解いて、日本史では高い偏差値をとった受験生が、大学の合否では世界史選択が有利となる。同じ学力の受験生の場合、日本史では不合格となり、世界史は合格となる。

 

 目標得点率が50点に設定されているとしたら、日本史が良問となる。しかし、共通テストのみで合否を判定する国公立前中後期や私立の共通テスト利用の大学・学部では、同じ学力でありながら日本史は不合格となる可能性が高い。これは、不条理ではなく不合理で、大学入試センターの未必の故意である。

 大学入試センターは、得点調整をするシステムは構築されているのだから、20点以上ではなく、平均点に2~3点を超える差が出た場合は得点調整をしなければならないと考える。

2022.1.20

 

「共通テスト 得点調整行わず」(大学入試センター発表)

 「大学入試センターは(1月)21日、得点調整は行わないと発表した。同一教科の受験者1万人以上の科目間で、平均点に20点以上の差が生じた場合に実施するが、今回はその条件を満たさなかった。」(『朝日新聞』2022.1.22付)

 

共通テスト本試験(2022.1.15実施) 平均点中間集計(地歴・理科)大学入試センター発表(2022.1.19)

平均得点率(平均点)と科目間格差。( )は昨年の共通テスト平均点

《地理歴史》

世界史B 68.01点(63.49点)

日本史B 54.92点(64.26点)

地理B  61.15点(60.06点)

 《理科②》

物理 61.97点(62.36点)

化学 49.45点(57.59点)

生物 50.08点(72.64点)

地学 54.75点(46.65点)

 

2022.1.22 

 

共通テスト本試験(2022.1.15実施) 地歴・理科平均点 大学入試センター発表(2022.2.7)

平均得点率(平均点)と科目間格差。(昨年の共通テスト平均点)

《地理歴史》

世界史B 65.83点(63.49点)

日本史B 52.81点(64.26点)

地理B  58.99点(60.06点)

 《理科②》

物理 60.72点(62.36点)

化学 47.63点(57.59点)

生物 48.81点(72.64点)

地学 52.72点(46.65点)

 地歴の世界史Bと日本史Bの平均点の差が13.02点となった。理科の物理と化学の平均点の差が13.09となった。受験生の多い科目間なので影響は大きい。世界史B・物理選択者の平均点合計は126.55点、日本史B・化学選択者の平均点合計は100.44である。選択により26.11の差が生じた。選択により大学入試の合否が決定することになる。

 最終集計で平均点に20点以上(1万人以上)の差がでなければ得点修正は行われない。しかし、なぜ20点(1万人以上)なのかの説明はない。20点の差は大きすぎる。 

2022.2.7 

 


共通テスト 過去問演習

①大学入学共通テスト日本史B(第1回・第1日程)2021.1.16実施

②大学入学共通テスト日本史B(第1回・第2日程)2021.1.30実施

③大学入学共通テスト日本史B第2回試行調査2018.11.10実施