NEW 令和5年大学入学共通テスト(第3回・本試験)日本史B(2023.1.14実施)分析・史料問題解説【生徒】

1得点調整実施の責任

(1)大学入試センター得点調整方法(『受験案内』2022.7.8)

 地歴・公民・理科②で、受験者数が1万人以上、平均点差が20点以上で得点調整という基準は、大学入試センターの責任放棄である。平均点が2点違えば、多数の受験生がひしめくボーダーライン付近では合否にかかわる。10点以上開けば、志望校や学部変更を余儀なくされる。平均点は2点以内に抑えるべきで、少なくとも5点以上の差がでれば、平均点を同一にする得点調整が必要である。このことにより、高校生は授業で、受験のことを考えずに、自身が興味・関心のある科目を自由に選択できる。科目間で得点差がでれば、平均点が有利な科目を受験科目に選び、高校の授業の選択をする高校生が増える。

2023.2.7

 

令和5年大学入学共通テスト 『受験案内』 得点調整方法 2022.7.8
令和5年大学入学共通テスト 『受験案内』 得点調整方法 2022.7.8

(2)令和5年度共通テスト平均点の中間集計(2023.1.18)

令和5年度共通テスト作問の評価

大学入試センター令和5年度問題作成方針に揚げた平均点の均等化に失敗

 大学入試センターは、令和5年度問題作成方針の「〇問題の分量・程度」において、「平均得点率に著しい差が生じないように配慮する」と明記している。前表のように、平均得点率に著しい差が出た作問をしており、方針の実現に失敗した。

地歴科B科目の作問は評価

・地歴科の世界史B・日本史B・地理Bの平均点はほぼ2点以内に収まっており、評価できる

理科の作問は責任問題

物理と生物の平均点には24点の差が出ており得点調整が実施される。得点調整しても生物選択者の多くは進路変更をせまられる。大学入試センターは責任を取るべきである。

2023.2.22更新 

(3)本試験理科②の得点調整について(大学入試センター2023.1.20)

○ 令和5年度大学入学共通テスト(本試験)のうち、理科②において、20点以上の平均点差が生じました。
○ 共通テストでは、原則として、20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められた場合、得点調整を行います。
○ このため、得点調整判定委員会で審議を行い、センターとして得点調整を実施することを決定いたしました。
○ 理科②の得点調整の換算表は、以下のとおりとなります。
 なお、理科②の「地学」は、受験者数が1万人未満のため、得点調整の対象としません。

(4)得点調整後の平均点

大学入試センター2023.2.6発表 令和5年大学入学共通テスト(本試験)平均点一覧
大学入試センター2023.2.6発表 令和5年大学入学共通テスト(本試験)平均点一覧

表は、大学入試センターが発表した得点調整後の各科目の平均点である。

世界史B・日本史B・地理B

・作問の目標平均点は60点であったとみられる。

3科目の平均点はほぼ2点以内に収まっており、作問は評価ができる。

・地歴科においては、過去の蓄積と作問者の努力により、平均点を60点前後1点に収める作問が可能であることを示している。他教科、他科目でも平均点を同一にしなければならない。平均点の許容範囲は2点以内であり、地歴科はそれを実現している。

②公民

・毎回の傾向であるが、倫理が点が取りやすく政経が難しい。公民には科目間の作問者の意思疎通か各科目の学習内容に関する特質か不明だが、平均点の差を解消できない何らかの構造的欠陥があるとみられる。しかし、機会均等や試験の民主化・平等性に反しており、根本的な解決が必要である。

③理科

・作問に失敗し、得点調整に追い込まれた。大学入試センターの責任は重い。

生物は5万7千人以上が受験して1人も100点が出ていないが、このような出題は異常で出題ミスである。授業で、思考力・判断力・表現力を問うことと入学選抜の出題を考慮なしにリンクさせるのは危険である。解答時間と出題総量、他科目との難易度の均等性を熟考、調整しなければならない。なぜなら、受験生にとっては、科目選択の運・不運がその後の人生を決めることになるからだ。おそらく、生物の出題は、新学習指導要領による授業を反映して、資料を分析して思考させる良問であったと推察するが、良問が生物選択者の不利益となったり、人生を変えることを余儀なくされたりするのでは、本末転倒である。おそらく共通テストによって授業内容、授業法の改善を求めているのではなかろうか。しかし共通テストは、大学選抜のために、総得点で勝ち負けを争う競技なのだから、競技内容から授業内容の改善を求めてはならないと考える。良問を「良問」にするには節度が大切だ。出題者自身が、今回のテストを60分の時間内に解いて100点がとれるのか、はなはだ疑問と考える。

・生物の平均点が極端に低かったが、得点調整により、得点調整前の点差は幾分緩和された。しかし、調整後においても物理と生物の差(14.93点)は受験生の合否に関わる不利益を生物学習選択・共通テスト選択者に与えている。今回示された得点調整方法は形だけの弥縫策で、本質的な解決になっていない。平均点を均等にするための得点調整ルール・方法という根本的な解決が必要である。

・標準偏差が生物17.45、物理が22.71となっており、多くの生物選択者の得点は平均点に近い範囲にとどまっている受験生が多く、成績上位者の物理選択者は100点満点が多数でているとみられる。生物選択者は最高点すら99点にとどまり、90点以上がほとんどいないと推察される。例えば、医学部の合格ラインは8割5分以上、難易度の高い大学は9割が合格ラインになっていることを考慮すれば、平均点の差という大学入試センターの責任によって、生物受験者が授業料の安い国公立大医学部受験を断念せざるを得ない状況に追い込まれたとみられる

④外国語

・英語は200点満点で平均点は116.16点である。中国語は人数が少ないとはいえ162.76点である。英語と中国語の平均点の差は46.6点に及び、不公平はあきらかある(標準偏差が小さくほとんどの受験生が高得点を取っている)。同一教科内の合否に明らかに影響する得点差があるにもかかわらず、これを放置して得点調整しない、現在の大学入センターの得点調整ルールと中国語の8割を超える平均点の出題内容は、「法の下の平等」に反する。

2023.2.13更新

 

2 令和5年度(2023.1.14)第3回共通テスト 日本史B(本試験)分析 史料問題解説

新学習指導要領の歴史的思考力や資料を読解・分析する能力を問う良質の出題である。おそらく平均点の目標を60点とした作問によるとみられ、目標を達成している。科目間の連携により世界史B・地理Bとの平均点の差が2点以内に収められている。今年度の日本史Bの問題は適切であったと評価する。

今後も、こうした結果が出せるよう大学入試センターは努力をしてほしい。

2023.2.10更新

 

令和5年度共通テスト日本史B(本試験)問題と解答

(1)第1問通史テーマ

 第1問は、テーマに沿った形で、原始・古代、中世、近世、近現代から出題される。

《今回のテーマ》

令和5年度第3回共通テスト本試験(2023.1.14)「地図から考える日本の歴史」日本の行政区画と辺境、東アジア情勢、作図の意図などを問う出題。

 

《直近の日本史Bセンター試験・共通テスト本試験(及び第1日程)の第1問・通史のテーマ》

令和4年度第2回共通テスト本試験(2022.1.15)「姓・苗字(名字)・名前」

令和3年度第1回共通テスト第1日程(2021.1.16)「貨幣の歴史」

令和2年度センター試験(2020.1.18)「教育」

平成31年度センター試験(2019.1.19)「交流・外交」をテーマに、第1問で、近世までの地域、東アジア、蝦夷地との交流・外交に関する出題、第6問で日米外交史に関する出題という変則的な構成となっている。

平成30年度センター試験(2018.1.14)「観光」

 

《共通テスト試行調査第1問・通史のテーマ》

第2回試行調査(2018.11) 「土地開発と災害の歴史」 

第1回試行調査(2017.11) 18歳選挙権制の実現をふまえ「中世までの「会議」や「意思決定」の方法

2023.2.10 

 

(2)出題の構成

①時代別配点

第1問(18点)古代5.25点。中世5.25点。近世3.75点。近代3.75点。

第2問(16点)原始(考古学中心・魏志倭人伝あり)3点。古代13点。

第3問(16点)中世16点。

第4問(16点)近世16点。

第5問(12点)近代12点。

第6問(22点)近代16点・現代(戦後)6点。

全体 原始・古代21.25点(うち原始3点)。中世21.25点。近世19.75点。近現代37.75点(うち現代6点。現代は1976年まで出題)

 《令和4年度》の時代別配点{( )は令和3年度}

 原始・古代 19.75点。(27.5点

中世 21.25点。(14.25点

 近世 19.75点。(19.75

 近現代史【ペリー来航以後の幕末を含む】 39.25点。(38.5)。うち現代史【戦後】の問題 10.5点。1987年まで出題。 (3.75点。1965年まで出題)

 《共通テスト過去3年間の時代別配点の平均》

原始(考古学)・古代22.83点(うち原始1点)。中世18.92点。近世19.75点。近現代38.5点(うち現代6.75点。平均1976年まで出題)

 

②分野別配点

政治経済・金融政策を含む】 古代15.25点 中世1.5点 近世5.25点 近現代2.5点 合計24.5点

外交 古代 中世3点 近世5.5点 近現代15.75点 合計24.25点

経済 古代 中世8.5点 近世 近現代3.75点 合計12.25点

社会 原始・古代6点 中世2.25点 近世6点 近現代12.75点 合計27点

文化 古代 中世6点 近世3点 近現代3点 合計12点

令和5年は、古代は政治史、中世は経済・文化、近現代は外交・社会が中心の出題であり、近世はバランスよく出題されている。近年は、暗記中心になりがちな文化からの出題が抑えられ、経済・社会からの出題が増加している。

《令和4年度》( )は令和3年度

政治【経済・金融政策を含む】 25.75点。39

 外交 22点。(8.5

 経済・社会 43点。(38

(うち経済15.25点。社会27.75点)

  文化 9.25点。(14.5点)

《共通テスト過去3年間の分野別配点の平均》

政治29.75点。外交18.25点。経済・社会40.08点。文化11.92点。

 

③出題方法・形式

《出題方法》

【地図】4 

【史料】10(史料の大意1。史料9) 

【資料】4(模式図1・年表1・表1・統計表1)

《出題形式》

[完成法]1問・・ア・イの2つを完成させて正答としており、単純な完成法ではなく、完成・組合せ法である。

[正誤法]7問(正しいものを選択6。誤っているものを選択1)・・誤っているものを選ぶ方が答えやすい。正しいものを選ぶ出題が多いのは、平均点を下げる効果があるので平均点を調整するために正しいものを選択させる出題が多いのではなかろうか。

[組合せ法]7問・・6択問題を出題。

[組合せ・正誤法]12問・・共通テストで中心になっている出題形式。難易度は高くなる。

[年代序列]5問(昨年度6問)・・3つの項目の年代序列は共通テストの定番となった。

2023.2.13更新

 

(3)史料問題解説

第1問 問1 解答番号1

 『常陸国風土記』。『日本書紀』。『続日本紀』

 

律令国家の地方行政区画の成立に関する出題。受験生には初見史料で記載内容の知識はないが、史料問題は、読解すれば解答できる問題となっている。しかし、第1問の問1が初見の史料問題なので受験生は緊張したであろう。

史料1の『常陸国風土記』には「総領制(惣領制)」に関する記載がある。「総領制」は高校生は学習しないのではないか。

 【総領制】天武・持統朝には数ヶ国を管掌する総領(惣領)が置かれた。浄御原令制下の700年(文武4年)10月に筑紫惣領(大宰府の帥の前身)、周防惣領、吉備惣領が任命された(『続日本紀』)のを最後に、大宝令の施行(701年)で大宰府をのぞいて廃止された。史料1に「郡家(こうりのみやけ)」の記載があるが、「郡」制は大宝令からなので、大宝令以前は「評(こおり)」制である。評の持っていた軍事機能は大宝令以降、郡と軍団に分化する。

 

史料2の天武13年(685年)には、諸国の境が定められた(『日本書紀』)。

史料3の養老2年(718年。元正天皇)5月に能登・安房・石城(いわき)・石背(いわしろ)の4国が置かれる(『続日本紀』)。

①国造らが総領に要請して、朝廷から派遣された総領が決定しているので誤り。

②石城国は、史料3のように、既存の陸奥国の5郡と常陸国の1郡を割いて置かれているので、2か国の分割であり、「既存の一か国を分割」は誤り。

③史料1のように、行方郡の設置は653年であり、大化の改新は乙巳の変(645年)以後の改革なので、「大化の改新より前に」と書いているのは誤り。

④史料3のように、大宝律令の制定以降も行政区画の変更が行われているので、正しい。

 【正解】

 


第2問

『朝鮮群載』。『九条殿遺誡』

問4 解答番号10

Xは、史料1に、新任の国司が赴任する日を吉日にしたり、任地の館に入るのは吉日時とし、在京の陰陽師に択んでもらっており、国司の交代の手続きも吉日を択んでいるので正しい。

Yは、問題文に「役所だけではなく個人でも利用された」とあり、史料2では、貴族が日常生活や年中行事で、暦の吉凶(暦注)の影響を受けているので正しい。

Xは正しい。Yは正しい

【正解】 

 

問5 解答番号11

  a「天皇が時間を支配していること」は正しい。文章A・Bや史料1・2に直接的な言及はないので

正誤の判断に迷ったかもしれない。

b地方の役所に陰陽師が置かれた。しかし、暦は陰陽寮で作成され、天皇から下賜され、地方の役所で書き写されているので、地方の陰陽師が「暦を独自に作成していた」は誤り。

c文章Bと史料2に書かれており、正しい。

d文章Aに「天皇や貴族たち個人の要請にも応え、事の吉凶を占ったり、呪術を施したりした」とあるので誤り。

「最も適当なものの組合せ」はa・cである。

 【正解】

 


第3問 問3 解答番号14

 『建武以来追加』大意。『大内氏掟書(おきてがき)』(『大内家壁書(かべがき)』などの別称あり)大意

 

古文書の史料の「大意」を用いた出題。授業・テストは古文書を読むことを目的としているのではなく、史料に記載された内容の歴史的な意義を考えることを目的にしている。史料を読解して考えることは時間がかかるので、受験生は時間不足に陥る(平均点が下がる)。史料に「註」を多く付けるのではなく、資料を正確に現代語訳した「大意」を出題することで、こうした問題を改善することができる。出題者の新たな工夫である。

出題は、「撰銭令」の理解と室町幕府と守護大名の関係を問う問題。

「撰銭令」は、貨幣経済の円滑化を図るため、幕府や守護大名・戦国大名が、撰銭(銭貨の選別・排除)を制限した法令。当時の金融・経済において、良質な唐銭・宋銭を選び、質の悪い永楽銭などの明銭を排除して混乱が生じていたため、幕府や守護大名は、永楽銭の撰銭を制限するなどの撰銭のルールを定めた。

1500年の将軍は足利義高(のち義澄)。1485年の山口の守護大名は応仁の乱で西軍の主力となった大内政広、1500年は政広の子の大内義興(よしおき)で、大内父子の権勢は将軍を上回っていた。こうした将軍と大内氏の細かい知識は必要なく、史料の読解と授業・教科書の知識で、撰銭令の時代背景の類推はできる。

幕府の『建武以来追加』では、私鋳銭の排除は認めているが、永楽銭・洪武銭・宣徳銭の排除は認めていない。一方、大内氏は、1500年以降も、洪武銭の排除を認めていて、幕府の規制が大内氏には及んでいないことがわかる。

a史料から、幕府は洪武銭の撰銭を認めず、大内氏は洪武銭の撰銭を認めているので誤り。

b正しい。

c永楽通宝は京都と山口で選別・排除が行われていたため、永楽通宝の選別・排除を禁止する法令が出されたと類推できるので誤り。

d正しい

「最も適当なもの」はb・dである。

【正解】

  


第4問 問3 解答番号19

 『安政文雅人名録』

 Xに「関東以外の場所に領地を有する大名には仕えることができなかった」とある。しかし、解説に「仕えている藩の名前なども確認できる」とあり、宇田川興齋は美作(岡山県)津山藩、石野精吉は備前藩(岡山藩・池田藩)の関東以外の藩に仕えているので、Xは誤り。

Yは、宇田川興齋が「蘭學」者とあり、正しい。

Xは誤り、Yは正しい。

 【正解】

 


同 問4 解答番号20

 『長崎実録大成』

 

a史料2のように、厦門海防庁、寧波府鄞県の咨文と長崎奉行の回咨のやりとりがされているので正しい。

b史料2のように、日本の漂流民を長崎に送り届けたのは、商人が手配した船頭、財副、通訳・介抱で、中国の役人は同行していないので誤り。

c江戸時代、明・清との正式な国交はなかったので、正しい。

d1685年以降、来航する清船の貿易船の数や貿易額は制限されていたので誤り。新井白石の1715年の海舶互市新例(長崎新令・正徳新令)では清船年間30隻、銀高6000貫に制限した。

「最も適当なものの組合せ」はa・cである。

 【正解】

 


第5問 問3 解答番号24

 『自由燈』9号

 Xは、史料で、「教うると教えざるの差い、又世に交ることの広きと狭きとに依るものにて」として、男女に本質的な差はないとしているので、正しい。

Yは、史料が1884年に発表されており、小学校の国定教科書制度は1903年なので誤り。

Xは正しい、Yは誤り。

 【正解】

 


第6問 問2 解答番号27

 長商創立75周年記念誌編集委員会編『長商卒業生の生活と意見』

 X アヘン戦争の結果、イギリスと清の間に1842年南京条約が結ばれ、上海が開港した。安政の五か国条約が結ばれたのは1858年のことなので、正しい。

Y 長崎商業の修学旅行は1896年のことであり、日清戦争の講和条約である下関条約締結の翌年のことである。史料に「戦勝の結果利権を得て新設された東華紡績工場の見物」とあるので前段は正しい。また、史料に、上海市民から「東洋鬼」の罵声を浴びたと書かれているので後段も正しい。

X・Yは正しい。

【正解】

  


同 問4 解答番号29

 山本作兵衛「入坑(母子)」。 

 

炭鉱労働者の出身地別・勤続年数別の統計資料(表2)とユネスコ記憶遺産に日本で最初に登録された山本作兵衛の炭坑記録画(史料2。以下の作兵衛の炭坑画に挿入された説明文)からの出題。

a表2のように、3年以上の比率が最も高いF炭鉱では、勤続年数3年未満の比率は79%で3分の2以上である。また、1年未満の比率が全ての炭鉱の中で最も低いE炭鉱でも、1年未満の比率が36%で最も高くなっているので、正しい。

b表2のように、他府県出身比率が最も高いD炭鉱の勤続年数1年未満の比率は56%なっているのに対し、1年未満比率はB炭鉱64%、A炭鉱は61%と高くなっているので、誤りである。

c史料2(以下の炭坑画)のように、女房は四人分(亭主{一足先に入坑}・女房・10歳未満の倅{せがれ}・幼児)の弁当を「担げて」下がっている(坑内に入ることを「下{さ}がる」といい、坑内から出ることを「上がる」という)ので、誤り。女性の坑内労働が禁止されるのは、昭和3年(1928年)の「鉱夫労役扶助規則」(工場労働者の保護立法である「工場法」に対応する鉱山労働者の保護立法)の改正以降のことである。(出題にはないが、この絵は「明治三十二年頃」1899年頃で、坑内で男性が先山{さきやま。つるはしで採炭}、女性は后山(後山・あとやま。先山が掘り出した石炭を集めて炭車に積み込む)となって二人1組[一先{ひとさき}・夫婦が多い]で作業することが多かった。)

d史料2のように、「他人に幼児を預けると十銭(中略)いるから大変、よって学校は間欠長欠になる」とあるので、正しい。

正しいものの組合せはa・dである。

 【正解】 

 

『炭坑(ヤマ)の語り部 山本作兵衛の世界 584の物語』田川市石炭・歴史博物館2008年
『炭坑(ヤマ)の語り部 山本作兵衛の世界 584の物語』田川市石炭・歴史博物館2008年

2023.2.28更新